19/02/19
4日目
前日ひかけについて行った真っ暗なテン場の東屋で僕は雨の音で目を覚ました。
野宿経験者なら分かってもらえると思うが雨の日の朝というのは、たとえ東屋の中に寝床を確保できていたとしても全てが水分を含むものになりどうしても気だるさが先行してしまう。意地でも次の日の目的地に着かなければ全体の行程にも影響が出るし、風呂がなかったりする。僕はその様なことを予めひかけに聞いていたので今日は雨の中結構漕ぐのかあと一人戦意喪失をしていた。
そんな心配も杞憂に終わり、今となっては当たり前になりつつある「雨の日は輪行」理論を適用した。
本合宿でバンバン輪行するのは個人的には気が引けるが、今日はまだプレ合宿なのだ。サイクのプレ合宿というのは快活で24をキメても良いし、利尻富士に登っても良いし、ラウンドワンでオールしても良いし、テン場で昼まで遊んでいて良い。要するに閉鎖的な日々を忘れて自由に遊べということなのだ。駆け出しのyoutuberみたいにね。
そんなこんなでいろちのレイン二人で昨日入ったミスドへ再び向かった。この時点で決まっていたのはこの日の夜の電車で八幡浜というところへ行き、そこから深夜に出航のフェリーで大分の別府に向かうということだけだった。とにもかくにもここで夜の6時か7時まで時間を潰す必要があった。作戦会議をしようやということで松山市の地図を広げるも、夏目漱石と道後温泉のダブルパンチ。仕方がないので松山にいることを忘れ、普通にただの日曜日のように過ごすことになった。
普通に過ごすと言ったら電車に乗り(二人とも免許など持っていない)往復で600円いくかいかないくらいの駅まで行き、チェーン店で飯を済ませてカラオケに行くといった具合だ。
そしてそのセオリー通り僕たちは路面電車に乗り、松屋で昼飯を食べ、本当にカラオケに行った。いつもと違うのは雨なのに男ふたりで観覧車に乗ったり、森温泉の代わりに道後温泉にもう一度入ったことぐらいだ。
思えばここまでの三日間狂った様に自転車ばかり漕いでいた。そういう意味ではこの日は文面では全く楽しそうではないが(ほんとに大したことをしていない)それなりに松山を楽しんだしゆっくりできたと思う。
夕方に輪行を完成させ無事に八幡浜へと向かう電車に乗った。多分電気が動力でないからだが車内はめちゃくちゃでかいモーター音?の様なものが響いておりこれが田舎の電車なのかと知った。まともに会話もできないのでひかけが携帯でアニメを見せてくれた。この時の僕はプレの疲れが最高潮に溜まっていたのでその見せてくれたスクールアイドルアニメにすっかり癒しを求めにいってしまった。諸悪の根源はここから始まったのである。
八幡浜に着いたのは確か11時を過ぎた頃であり僕たちはめちゃくちゃに腹が減っていた。橋を超えて向こう側に改札があるタイプでなくて命拾いした記憶がある。
当然こんな超田舎でやっている店などないだろうと思っていたら何やらジョイフルという店があるらしい。その時の僕はジョイフルとポイフルの違いも分からないくらいのシティボーイであった。胃袋を満たしてくれるならポイフルでもじょいふるでもなんでも良いという思いでひかけの後ろを着いていった。
今となっては合宿につきものとなったジョイフルに行ったのはこれが初めてで、それはつまりあの微妙に高くも安くもない価格帯にうまいことやられるのも初めてだったということだ。謎にたくさん頼んだ気がする。
これまで僕の中のチェーン店は中学の校区の中、高校の周りにあった店、四日市駅周辺とかなり限られていた。ジョイフルが東北にも九州にも(当たり前)なんなら西宮にもあることが判明し、軽くカルチャーショックを受けた。ちょっと種類が違う話だが僕と榊原は関西にいる限りこれからも数々の文化の違いを目の当たりにするのだと思う。
この後はローソンでコッヘルを受け取り、頭が完全にバグっている状態で別府行きの船に乗った。大部屋にいたのはトラックの運ちゃんばかりで若者の姿は僕たちモンベルのレイン二人だけだった。
どこまでが今日で、どこからが明日か分からないまま硬い床に寝袋を引いて寝た。
四国合宿では断念せざるを得なかった松山、機会があれば行きたいなぁ